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留学生活、旅行など

台湾の大学に入学して1年、語学留学時代を含むこの2年を振り返ってみた

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台湾の大学「國立政治大學」に入学してから1年が経った。今年から2年生になり学科のイベントの準備をしたり後輩たちの面倒を見る立場になりこの1年間は本当に時間が経つのが早く感じた。この1年間の振り返りと反省も兼ねて、1年前の筆者と同じように台湾の大学への本科入学を目指してる日本人の方の参考になれば、と思いこの1年間台湾の大学で過ごして感じたことを率直に書こうと思う。

台湾の大学へ本科生として入学したいと思った背景

筆者は生まれも育ちも日本だが、母親は台湾人で小さい頃から台湾には4年に一度くらいのペースで行っていた。いわゆる日台ハーフではあるが、母親は僕に全く中国語も台湾語も教えてくれなかったので日本語環境で育った筆者は母語も日本語だしアイデンティティも日本寄り、台湾人というアイデンティティは皆無だった。

そんな筆者が台湾へ留学しに行きたいと思い始めるキッカケとなったのは2012年(当時、僕は17歳)に中国各地で起きた反日デモである。原因は当時の民主党政権による尖閣諸島の国有化。当時、テレビニュースで毎日流れていた現地のデモの様子は今でも鮮明に覚えている。あの衝撃的な映像は元々中国人に良い印象を持っていない日本人には彼らに対する更に悪い印象を与えたのではないだろうか。しかし、あの映像を見て筆者は逆に疑問に思ったのである。「本当に中国は我々日本人が思っている単純な”反日国”なのか?」と。

それからネットや書籍で中国に関する情報を集めだした。それと同時に「中国」という国に興味が湧き出し、中国に関する色々な事を調べだしていった結果、日本語情報では集められる情報に限界があるという結論に至った。そして、もっと多くの情報を得るために中国語を勉強することになったのである。それから中国語が話せる母に中国語を教えてもらうことになったのだが、全く勉強にならなかった。

 筆者に勉強する気がなかったわけではなく、母が中国語を「ちゃんと」教えることができなかったのだ。ただ単に中国語を「話せるだけ」の母は中国語非母語者である筆者に基本から中国語を教える能力はないのだ。それも当たり前。普通のネイティブスピーカーは「話せること」ができても「教える」訓練を受けてなければ「教えること」などできないのである。私達日本人が日本語教師の教育を受けなければ日本語を外国人に教えることができないことと全く同じことだ。

それでも、本気で中国語を勉強したかった筆者は語学学校について情報収集をし始めた。日本にも台湾系中国語語学学校があることをその時知ったが、日本で勉強するのは自分には合わないと思ったので台湾へ直接行って勉強しようと考えるようになった。そして、色々調べていく内に台湾現地の大学へ直接正規生として入学するという選択肢も出てきた。現地の大学へ入学すれば最低でも4年間は台湾で中国語だけでなく専門的な知識が学べるだけではなく、外国で生活することによって自分自身の価値観を広げることができると思ったからである。語学留学だけだと長期でも1年から1年半なので、仮に1年間真面目に勉強してある程度中国語を学んだとしても一旦日本に帰ってしまうと中々中国語を使える機会は少なくなってしまい中国語を忘れてしまう可能性が高い。

そして、両親を説得して高3の冬休みに台湾へ単身語学留学することになった。你好(ニーハオ)と謝謝(シエシエ)くらいしか話せない状態で行ったので当初は台湾の親戚が言っていることを全く理解できなかったが、今考えるとよくそんな状態で単身で台湾へ行ったな、と思う。逆にそんな状態で行ったからこそ基本中の基本から先入観なく中国語をちゃんと勉強できたんじゃないだろうか。

語学留学から台湾の大学へ入学するまで

高3の冬休み(2012年12月)から翌年2月下旬までは台北の古亭駅近くにある「國語日報」という新聞社が経営している中国語教室で中国語の基礎を学び、3月は高校の卒業式参加のため日本へ一時帰国、それから数日後にすぐ台湾へ帰り、今度は國語日報ではなく國立台灣師範大學(以下師範大)の語学センターへ行った。この師範大も國語日報と同じく古亭駅近くにあり、近くには永康街や師大夜市など美味しい食べ物が沢山ある名物スポットもある素晴らしい大学なのだが、台湾へ語学留学する日本人にすごく有名な語学センターなので日本人がかなり多く、1クラスに2、3人は日本人が必ずいるという状況でした。そうなると中国語の勉強のために日本語を全く話さないという環境を付くのは難しい。

しかし、語学センターとしての品質や設備はこの師範大が台北の大学の中では一番と言ってもいいと思う。半年後に行くことになる國立政治大學(以下政治大)の語学センターと友人が数名通っていた國立台灣大學(以下台湾大)の語学センターと比べても環境の違いは一目瞭然。政治大の語学学校は山の上にあり、正門から語学学校まで歩くと15-20分も掛かる(山の上まで行くバスもあるが、結構待たないといけない上に降りのバスはほぼ寮住みの学生で満員なので帰りはほぼ歩くしかない)。台湾大の語学センターは馬鹿でかいキャンパス内の奥側にあるので、自転車がなければ行くのも一苦労だ(台湾大は語学学校に限らず自転車がないと移動も一苦労…。なので台北はよく雨が降るので傘差し運転が普通だ)。

もちろん人それぞれ好みがあるので師範大の語学センターが絶対に一番、という訳ではないが、設備や授業の充実度、先生のレベルも含めて師範大の品質はかなり上だと思う。筆者が日本人でなければ師範大でずっと勉強していたかもしれないが、中国語がある程度できるようになるまではできるだけ日本語環境を作りたくなかったので半年間(2学期)勉強した後、本科生として入学したい大学の第一志望であった政治大の語学センターへ行くことにした。

政治大も日本人が全くいない、という訳ではなかったが、師範大と比べるとかなり少ない方だった。なので、1年間(4学期)勉強したにもかかわらずクラスにいる日本人は筆者だけだった。そのおかげで日本語を話すことなく中国語の勉強に集中できたのだが、先ほども書いたように語学学校が山の上にあるので毎日通学が大変だった。それでも自分の第一志望の大学で勉強できることはとても意義のあることだと思ったので他の語学学校へ移ろうとは思わなかった。

2015年1月頃、筆者は政治大の語学学校に通い中国語を勉強しながら大学申請の準備を始めた。詳しい申請方法などについてはここでは割愛する。筆者の第一志望は國際事務學院外交學系という日本の大学でいうところの国際関係学部だったのだが、必要な資料が高校の成績と卒業証明書(共に英語版)、エッセイ(英中2言語)だけだったので準備は比較的楽だった。国際関係学なのに英語能力は証明しなくてもいいのかと思ったが、英語関連の検定が必要となるとわざわざ受験しなければいけなくなるので結果的には必要なくてよかった。もちろん大学、学科によっては英語、中国語ともに検定の成績が必要なことがある。筆者は万が一に備えて滑り止め兼第二志望だった政治大の教育学部にも申請した。外国人学生はこのように大学と学科ごとに申請をすることができる。この教育学部の申請に必要な資料も国際関係学部とほぼ同じだったので準備はそれほど大変ではなかった。

無事大学に合格

合否結果が出たのは5月頃だったと思う。国際関係学部、教育学部ともに無事に合格していた。もちろん最終的に選択したのは第一志望だった国際関係学部である。台湾は9月入学なので合否結果が出てから入学まで3、4ヶ月ほどある。その間も中国語の勉強は続けていたが、語学留学のビザから正規留学のビザへ切り替える必要があったので日本へ一時帰国して居留ビザへの切り替えを行った。ビザのためにわざわざ日本へ帰るのは少し面倒だったが、台湾国内では居留ビザへの切り替えが不可能なので仕方ない。ビザの切替後は2週間ほど日本へ滞在してから台湾へ戻り、語学学校へは戻らず入学手続きの準備、台湾人の友達と中国語の会話練習をほぼ毎日していた。

入学前は外国人なので台湾人の友達がちゃんとできるか不安だったが、中国語での会話は比較的できる方だったし、筆者自身も台湾人とのコミュニケーションは慣れていたので特に何の問題もなくクラスメイト達と友達になることができた。もちろん台湾人クラスメイト達が外国人に対してもフレンドリーというのも大きいが、台湾人クラスメイト達と不自由なく絡むのはある程度の中国語能力はもちろん、良い意味で遠慮し過ぎない態度が必要ということを大学へ入学してから改めて思い知った。

台湾人クラスメイト達と入学直後から仲良くすることはできたが、日台ハーフとはいえ日本育ちの筆者と台湾人達には少なからず価値観の違いがあった。彼らの言っている中国語の意味は分かっても表面的な意味しか理解できなければ彼ら自身の思想や習慣を理解することはできない。大学入学前までは僕より年上か同い年の台湾人としか交流したことがなかったので僕より年下のクラスメイト達の思想と習慣を最初はあまり理解することができなかった。それで一時期は勝手に距離感を感じて友達がいるのに寂しいという矛盾に陥っていたが、彼らと交流を続けているうちに徐々に必ずしも彼らを「完全に」理解する必要がないことを悟った。

人によっては筆者の行為を「思考放棄」と思うかもしれないが、決して彼らを理解することを放棄したわけではない。ただ悩むことをやめただけである。もちろん、彼らをもより理解するために日々台湾人達と交流は続けているが、日本人である筆者と彼らの価値観が違うのは当たり前のことなのである。なので、変に悩み過ぎるのはやめた。それから気が楽になり台湾人と過ごしている時も勝手に距離感を感じて寂しい思いをするということはなくなった。こうした思いをしたことがあるのは自分だけかなと思っていたが、以前の僕と同じようなことで悩んでいた日本人の方に最近お会いしたので意外とこういう思いをしている人は多いのかもしれないと思った。

大学の授業やテスト

当たり前だが、授業はほぼ全て中国語で行われる。英語で行われる授業もあるにはあるが、必修科目はほとんど中国語でしか受けることができないので卒業するためには中国語を避けて通ることはできない。入学前、僕はそれなりに中国語の勉強はちゃんとしていたので授業で先生が何を言っているかは大体理解できたのだが、内容が専門的かつ台湾人に合わせて作られているので1年生の時は内容を知識として吸収するのに苦労した。日本語で受けることができてもちゃんとその授業内容の背景を理解していなければ知識として吸収することはできないのと同じである。

大学の授業スタイルにも最初は慣れるのに苦労した。高校の頃とは違い先生は基本的に教科書に沿って教えることはない。もちろん、科目にも先生にも依るが、少なくとも僕が受けた授業ではほとんど先生がずっと解説しているだけだった。黒板に何かを書くこともほとんどないので耳で聞き取った内容の要点を自分でノートに書くしかない。その授業スタイルに慣れることができなかった僕は1年生の1学期目の必修科目を2科目5単位も落としてしまった。

まだ大学での勉強環境に慣れていないとはいえ1学期目から5単位も落としてしまったのがすごくショックだった筆者は、2学期目からは試行錯誤しながら各科目の勉強方法について研究し1学期目は単位を落としてしまった科目もギリギリだったが単位を習得することに成功した。台湾の大学の場合、学部にも依るが、必修科目の単位を仮に落としてとしても基本的に卒業までに取得し直すことができれば留年することはない。なので、仮に必修科目の単位を落としてたとしてもあまり落ち込みすぎることはない。もう一度努力して単位を習得し直せばいいだけだ。

授業についてもう1つ注意しなければいけない点がある。台湾ではほとんど英語の参考書を使用し、授業では中国語で解説される点です。これも最初は慣れないと思います。英語圏の国で育った背景がある方なら少しは楽かもしれませんが、筆者は日本で育った完全な日本語母語者なので母語でもない言語を2言語も同時に使わなければいけないことに苦労した

テストについてだが、これまた科目と先生に依って変わってくるが、筆者の所属している学科である外交学科の必修科目はほとんどが「専門名詞の意味の回答」と「ある事象に対する理論と自分の考えを書く」2種類の問題形式だった。専門名詞の意味を回答する問題は聞いた感じはそんなに難しくなさそうだが、ただの暗記問題なのでテスト範囲が広い場合は大量の専門名詞を覚えなければいけないことになる。暗記が得意な方なら問題ないかもしれないが、筆者のように単純に暗記するのが嫌いな学生はこうしたテスト勉強は苦痛でしかない。一方、ある事象に対する理論と自分の考えを書く問題は暗記しなければいけない物は少ないし、自分自身の考えを書くだけでいいのでむしろ暗記問題より楽だったりする。

結論としてはテストは科目と先生によってもスタイルが異なるので、しっかりと授業内容と資料、参考書の復習をしつつクラスメイトや先輩などのアドバイスを元にテストの傾向を研究するしかない。

筆者が思う留学に向いている人の特徴

以下は筆者の個人的な意見である。筆者自身、「日本人留学生」として台湾に来ているので日本人も含めて外国人留学生と関わる機会が少なくないのだが、彼らの中には台湾にかなり馴染めている留学生もいれば、ずっと外国人留学生としか絡んでいないあまり台湾にも台湾人にも馴染めていない留学生もいる。別にどちらが良いとか悪いとはないのだが、折角台湾へ留学しに来たのだから台湾へ来た理由はどうあれ台湾社会にも台湾人にももっと馴染んだ方が留学生活により意義があるんじゃないかなと個人的に思う。

筆者も台湾へ来たばかりの頃は日本との違いの多さと環境の違いで全く慣れることができなかったが、そんなことは当たり前で徐々に少しずつ慣れていけばいいのだ。大事なのは自分の国と比べすぎないこと。台湾と自分の国を比較すること自体は別に悪いことではないが、「この国はこれがダメ」だとか「日本の方が良い」とか台湾を卑下するために比較するのはあまり褒められたものではない。価値観の違いを認め、視野を広げることのできる人が台湾に限らず海外留学において現地社会と現地人と馴染むために要素の1つだと思う。

現地社会に馴染むために現地人と交流をするのは良いことだが、自分にプレッシャーを与えすぎても心体ともに良くないので、時々で良いので日本人友達と会って情報交換をしたりリフレッシュすることも大切だ。しかし、日本人と会うのが頻繁すぎると言語の勉強に影響すると思うのでバランスを考えながら会うことが重要だと思う。

まとめると、現地人と交流することを嫌がらず、相手と自分の価値観の違いを認めることができる視野の広い人が海外留学に向いているのではないだろうか。別にそれができないなら海外留学をするな、とまでは言わないが、それができない人は海外生活がストレスに感じる確率が高いかもしれない。僕の周りにも台湾の環境と価値観に慣れることができず自分の国に帰ってしまった外国人を何人も見た。まあ実際に現地に行ってみないばかりは何とも言えないが、留学先では常にオープンマインドでいることを心掛けたい。